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訪日観光“本格回復”へ!2025年、外国人観光客が今求めている「日本らしさ」とは?

新型コロナウイルスの影響を乗り越え、日本の観光産業は力強い回復の途上にあります。しかし、私たちが目の当たりにしているのは、単なるパンデミック以前への回帰ではありません。

訪日外国人観光客(インバウンド)の数は過去最高に迫る勢いですが、その内実、すなわち旅行者の価値観や行動様式は劇的に変化しています。

2025年のインバウンド市場を読み解く鍵は、「量」の回復の先に現れた「質」への転換、そして、旅行者一人ひとりが探し求める、より本質的でパーソナルな「日本らしさ」にあります。

本記事では、最新データと社会的背景を基に、現代の訪日客が真に求めている体験を分析し、これからの日本の観光事業、今求められている「日本らしさ」を考察します。


インバウンドの再熱:数字が示す2025年の動向

現在のインバウンド市場の概況を客観的なデータから見ていきましょう。数字は回復を物語っていますが、その内訳を分析すると、今後の観光戦略のヒントとなる重要な変化が見えてきます。

訪日外国人数はどこまで回復したのか?

日本政府観光局(JNTO)の発表によると、2024年の訪日外客数は3,000万人を突破し、36,869,900人で、コロナ禍以前の2019年(3,188万人)を凌駕し、完全に回復しました。2025年もその勢いは加速し、月によっては2019年同月比を上回るペースで推移しています。

この回復を牽引しているのは、地理的に近い韓国、台湾、香港といった東アジア市場です。いわゆる「円安」も海外からの旅行者にとっては追い風となり、活発な消費活動が見られます。また、東南アジア諸国からの旅行者も着実に増加し、市場の多様化が進んでいます。

一方で、欧米豪からの旅行者は、人数ベースでの回復率はアジア圏に及びませんが、一人当たりの旅行支出額が非常に高いのが特徴です。彼らは滞在日数が長く、特に文化体験などへの支出が大きい傾向にあります。より深く本質的な日本文化との接触を求める彼らは、今後のインバウンド市場における「質の向上」を占う上で極めて重要な存在です。

コロナ後の旅行スタイルは「体験重視」へ

この「質の向上」を象徴するのが、旅行の目的が「モノ消費」から「コト消費」へと明確にシフトしている点です。所有欲を満たす旅から、その土地でしかできない、心に刻まれるユニークな「体験」にお金と時間を使う傾向が強まっています。

この変化は、コロナ禍を経て「本物」の価値や人との繋がりを再認識するようになったことや、SNSで自分だけの特別な体験を共有する文化が定着したことが背景にあります。

こうした流れを受け、旅行形態も団体旅行から個人旅行(FIT)へと完全に移行しました。そして、少人数グループでより長く滞在し、都市部だけでなく地方へと足を延ばす「地方回遊型」の旅が、新しいスタンダードになりつつあります。


体験重視の旅へ:いま人気の「日本らしい」過ごし方

では、具体的にどのような「日本らしい体験」が、外国人観光客から求められているのでしょうか。それは、日本の日常や地域文化の中に深く根差したものです。

ディープな地方体験が人気の理由

今、経験豊富な旅行者ほど、東京や大阪といった大都市を離れ、日本の原風景が息づく地方を目指しています。彼らが強く求めるのは、「Authenticity(本物であること)」です。

例えば、最近では、よくあるホテルだけではなく、歴史ある古民家を改装した宿泊施設が大きな人気を博しています。これは単に珍しい建物に泊まるということではありません。そこには、日本の伝統建築や職人技、そして地域に根付く生活文化そのものを体感したいという強い動機があります。

これは、貴重な価値ある体験、本物の体験を求める現代のインバウンド需要の核心を突いていることを示唆します。

使われなくなった建物に新たな価値を与え、文化的な宿泊体験として再生させることは、持続可能な地域活性化、日本の空き家問題の解決にも寄与する優れたモデルです。

こうしたその土地ならではの産業や風土に根差した体験が、旅行者に忘れがたい記憶を刻み、最大の日本らしい新しい魅力となっています。

文化・食・人とのふれあいを重視

「コト消費」の中でも、特に根強い人気を誇るのが日本の伝統文化に触れる体験です。京都などでの着物はその代表格ですが、単なる衣装体験ではなく、その背景にある日本の美意識まで含めた総合的な文化体験として価値が見出されています。

同様に、茶道やそば打ちなども、その所作に込められた精神性やもてなしの心を学ぶ機会として捉えられています。

そして、あらゆる日本での旅行の体験の根底にあるのが「食」と「人とのふれあい」です。

高級店だけでなく、地元の市場を訪れたり、農家で家庭料理を共に作ったりすることに、より大きな価値を感じる旅行者が増えています。こうした深い体験の実現には、言葉の壁を超えた質の高いコミュニケーションが不可欠であり、体験の価値を大きく左右する要素となっています。

観光地も変化:「受け入れ体制の再設計」が進む

旅行者のニーズの変化に対応し、観光地側も「受け入れ体制の再設計」を進めています。そのキーワードは「持続可能性(サステナビリティ)」と「デジタル化」です。

かつて、地元の住民が生活で使っているバスに乗れないなどの問題で話題になった「オーバーツーリズム」。京都市などでは、観光客が特定の時間や場所に集中するのを避けるため、観光分散化の取り組みが進んでいます。

これは、海外からの旅行者の満足度を高めると同時に、地元の地域住民の生活と文化を守るための重要な施策です。

インフラ面では、キャッシュレス決済や無料Wi-Fiの整備が急速に進展しました。特に、多言語に対応したWebサイトやオンライン予約システムの充実は、個人旅行者にとって不可欠です。

ここで重要になるのが、単に翻訳するだけでなく、日本の文化的背景を理解し、各言語のユーザーに「伝わる」Webサイトを構築する専門性です。日本の文化は西欧社会と違い深淵です。日本の美の概念の1つである「わび」「さび」と言われても、なかなか日本国外の方々が、最初からそれを理解するのは難しいでしょう。

事前に受け取る優れた日本の情報は、日本の旅行体験の質を根底から支えるものと言えるでしょう。


まとめ:2025年の日本観光は「本質」と「多様性」の時代へ

2025年、日本のインバウンド観光は新しい時代に突入しました。インバウンド旅行者が求めているのは、画一的な「日本」のイメージではありません。彼らは、自らの興味に基づき、多様な日本の魅力の中から、自分だけの「本物の日本らしさ」を発見し、深く繋がりたいと願っています。

この新しい時代の要請に応えるために、観光事業者に求められるのは、「文化の翻訳者」であり、「体験の設計者」としての役割です。

表面的な情報を外国語に置き換えるだけでは、文化の真髄は伝わりません。その背景にある歴史や哲学を深く理解し、質の高い体験として再構築し、心を込めて伝えていく。今後のインバウンドビジネスの成否は、この「体験設計」と「接客文化の再発明」にかかっています。

アジアンエージェンシー合同会社が掲げる企業理念「Feel more Japan, Feel more Nippon」は、まさにこの新しい時代の精神を体現しています。

多言語でのWebコンテンツ制作から、リアルな宿泊・文化体験の提供、地域活性化への貢献まで、その事業は日本文化の本質を世界に伝え、人・経済・文化の交流を促進するという目的で繋がっています。

日本の観光の未来は、この国が持つ「本質的な価値」と、世界中の人々の「多様な好奇心」を、いかに深く、豊かに結びつけられるかにかかっているのです。